充実の休日(2): ブルーノートでバートン教授に会う。2006年05月30日 23時55分

…というタイトルですが、その合間の話を少し。

息子は夕方から週に一度の塾があるので早めに帰宅して送り出し、そのあとは出掛ける時間までピアノの練習とアイロン掛け。アイロン掛けの話なんて誰も頼んでませんかそうですか。というわけで、ピアノはソナチネアルバム、『領分』、ラヴェルのソナチネと難易度も傾向もバラバラなものを少しずつ。ラヴェルなんてちょっと無茶なんですが、ハードルの高いもので少し消化力を鍛えないとって感じです。最近こんなメニューで改めて認識を深めている課題は「左手のアルペジオ」。これがとことん弱いです。指がつられる、もつれる、当然音価が均等にならない。でもこればっかりは訓練あるのみ、指を独立させるエクササイズでコントロールの精度と筋力を上げるしかありません。というわけで最適な教材としてラヴェルのソナチネ最終楽章、ソナチネアルバムのハイドンなどを繰り返し。腕の筋肉がカッカと熱いです。

と、ひとしきり弾いてアイロン掛けて(だからそれはいいってば)、おもむろに出掛けて青山のブルーノートに向かいます。2nd showなので集合は20時半。ご近所仲間の編集者Mさんとそのご同僚のサイクリストの方と3人で。この同僚の方のご尽力により、中央前から2列目という絶好のテーブルで楽しめることになりました。ありがとうありがとう。この席だと、ポップス系のときはわかりませんが、ジャズなら生音やモニタスピーカの音が直接席に届き、よりリアルな肌触りの音が伝わるんですね。すごかったです。もちろん、演奏は何しろバートン、メセニー、スワローそしてサンチェスという強者揃いですから申し分ないです。背筋を伸ばし、肩から先はリラックスしてしなやかに全身でしなりながらビブラフォンを叩くバートン、カッコ良かったです。威厳のある佇まいは「教授」といった感じです。メセニーは途中わりと抑え目に思えましたが、ラストでギターシンセに持ち替えたときはいい感じにはじけていました。楽しそうな笑顔で全力で弾きまくる、やっぱりメセニーは永遠のギター小僧です。神っていう人も多いんですが、むしろいたずら天使。

そしてそして、本日何より収穫だったのは、スティーヴ・スワローというベーシストを見られたことです。この、ともするとご隠居風の老紳士は、細くしなやかな指でタッピングノイズ一つ立てずに、速いパッセージを無類の正確さで紡いでいくのです。それも、リリカルに。よく見るとピックで弾いているのですが、それが嘘のような自在で表情豊かで柔らかなタッチ。彼のプレイを最大限に生かす、セミアコボディのエレキベースのふくよかな音。早速ベースの買い換えを決意しましたよ(笑)。スワロー作曲の"I'm Your Pal"も優しさにみちた素晴らしい曲。元々彼のことを知ったのは、彼が作曲した不世出の名曲"Falling Grace"がきっかけだったので、ソングライターとしての比類なさも改めて確認した次第。すごいお方です。

ただでさえお値段高めのブルーノート、しかもこれだけの豪華メンバーだったのでちょっと半端じゃない出費でしたが、それだけのこと以上だったなあと満ち足りた気分で家路につきました。それに、多分この組合せの公演はヘタすると二度と聴く機会がないかもしれないし…。音楽って一期一会です、本当に。

明けまして音楽って素晴らしゅうございます。2006年01月09日 22時36分

というわけで昨日、ベーシストデビューの日を迎えました。練習を重ねるにつれ、段々とフレージングの「勘」が戻ってくるのがわかり、それは楽しかったです。思えばバンドやユニットをやっていた頃は、間奏部やエンディングに変化をつけるために、同じコードに対してどんなフレージング、どんなリズムパターンを充てるかについて常にアタマを使い、指を動かしていたわけで(まあ、ベースではなく主にキーボードですが)、その感覚が呼び覚まされて来る感じはそのまま「音楽のヨロコビ」を取り戻す過程でもありました。ちと大げさですが。

本番前にみねぎし氏と雑談している中で、他のアートや美的体験と比べて音楽のほうが「直接的」な感じが強いのではないか、という話になりました。これは、音が物理現象だということ、時間を伴う体験だということに深く関連しそうなのですが、更に一歩踏み込むと、実は音楽が非常に数学的な裏打ちをもって成立していることとも関連性があるんじゃないか、という気がします。もっともバルトークの言う黄金分割やフィボナッチ数列のようなメソッドになると、本当にどこまで有効かは微妙なところがありますが、そこまでカッチリした理論でなくても、たとえば前段で触れたような「構成」の考え方、これは音楽の土台にしっかりと存在します。どんな構成にするかについて「これしかない」という唯一の解はありませんが、どの解を選ぶかはちゃんと意思をもって選び、かつその意思に沿った戦略をもって細部を仕上げに掛からないと音楽は破綻します。そんなふうな音楽だからこそ、作り上げる過程というのは、何か隠された法則を探し当てるような気がしてとても楽しい。物理現象だということとは別に、何か「直接的」なものだと感じるのはこのためでもあります。

それにしても、こうした構成についての感覚や知見は歳を重ねるほど深まるのに対して、演奏技術のほうは下降しているという現実に毎度直面させられるのが何ともカナシイです。以前、ピアノについてそんなことを書いたのですが、ベースも同じです。今回せっかく良いきっかけを得たのだから、もう少し技術的なキャッチアップを図ろうと思います。うーん、そう言えばこれが新年の目標?

さてさて。肝腎のライブはどうだったかと言うと。初めて行ったハコだったのですが、こぢんまりとした、趣味のいい内装・照明の、とても居心地のよい空間でした。リラックスした気分で本番に臨みました。全5曲。みねぎし氏のギターの弦が切れるという想定外のハプニングで、MCも考えていなかった仁さんと私はとりあえずの即興BGMで場を繋ぐという場面もありましたが、本番が一番いい出来だった曲も2、3あったと思います。悪くはなかったんじゃないでしょうか。気持ちよくビールで乾杯できました。その後は、ご来場のマンジュさん、間に合わなかったらしいシンジさんを交えて河岸を替え、めまぐるしく色んな話題で盛り上がったのですが、何せ終電があるのでお先に失礼!した次第。千葉県は遠いなあ…翌日全く用事がなければ、夜通し飲みたいくらいだったのですが。ざんねん。

追伸: あらためて、楽器って体力使いますよねー。いやその、運ぶためにでなく、弾くことで、です。毎日のストレッチが非常に重要だったわけでして。というより、鍛えなきゃ体。

ベーシストデビューします。という程のものかどうか…2005年12月26日 00時37分

唐突にみねぎし氏から「ベースを弾いてくれないか」と誘われました。っても人前でベースを弾いたのは、思い起こせば高校の室内楽以来、つまりそれはベースではなく「コントラバス」だったりする有様で、本当に私なんぞでいいのかと疑問に思いつつも好奇心には勝てず「いいっすよ」と思いっきり答えてしまった次第。

25日の夜はその第一回目の合わせでした。予習用に貰った音源は、アコギ・ジャンベ(ボンゴのようなパーカスの一種)、龍笛(!)というアコースティックな組合せなのに対し、今回はギターもエレキでドラム、ベースとのトリオ編成なので、一体どんなベースラインを付けたらいいのか悩みつつ、21時の練習開始を前に某所でアイリッシュビールで夕食。iPodで予習曲を聴きながらも、店内のディスプレイに映る全日本フィギュアの女子フリーに目は釘付けです。すごい戦い。誰が勝ってもおかしくないという緊迫感に後ろ髪を引かれつつ練習へ。

さてどうなることか、という不安も、ドラムスのjinさんの叩き出すファンキーなビートで吹っ飛びました。絶妙に変化をつけつつステディなビートを繰り出すjinさんのドラミングのお陰で、予習している時には音型が定まらなかった部分すら自然にフレーズが湧き出してくるような感じで、上手い人と演るって本当にいいなあ、楽しいなあと改めて思いました。これなら何とか本番も乗り切れそうな手応えを感じました。こんなにわかベーシストですが、みねぎしさんjinさん宜しくです。ちゃんとお約束どおりコンプを買ってロックな音にしますね。

こどもの領分に分け入ってみる。2005年12月18日 23時53分

そろそろ息子のピアノ発表会の課題を決める時期になりました。まだ先生からの提示はないのですが、今やっている湯山昭『お菓子の世界』のフランス近現代風味が本人は気に入っているようなので、ちょっと思い切ってドビュッシーの「ゴリウォグのケークウォーク」なんかどうか、とネタ振りをしてみたところ、食らいつきの良いこと! 確かに、この曲のポップキッチュなテイストは子供にも魅力的に映るに違いありません。まあ、難易度的にはさすがに先生からストップが掛かるかもしれませんが、そのときはきっと近現代モノから何かカッコいい曲を探してくださることでしょう。いい先生につけて息子はシアワセモノだと思います。

などというやりとりをするうち、ふと「ゴリウォグ」の入っている『こどもの領分』全曲を聴きたくなって、久々に鳴らしてみました。…そうか。ドビュッシーでもこれは技術的になんとか手が届きそうだ、それにかわいいしキレイだし。ということで、思い立って楽譜を買って来ました。全6曲ありますが、とりあえず技巧的に複雑なものは後回しにして(笑)、1.「グラドゥス・アド・パルナッサム博士」、5.「小さな羊飼い」、そしてピアノピースで持っていた6.の「ゴリウォグ」などを試し弾き。なかでも「小さな羊飼い」は今まであまり意識しなかった小品ですが、技巧的にはシンプルでありつつ、テンポや強弱の制御をきちんとなぞると、美しい息遣いの起伏が立ち現われて、その魅力を再認識した次第です。

そこでちょっと問題が立ち現われました。というか、以前からちょっと気にしてはいたのですが、うちにある録音はパスカル・ロジェのもので、どうも拍節感や緩急の制御が甘い、というか緩すぎるのです。楽譜をなぞって鳴らしてみると、改めてその弊害がはっきりわかります。どんな感じかというと、複付点8分音符と32分音符だったら、音価は7:1であるべきなのですが、これをロジェは平気で3:1で弾いてしまうんですね。これはどう考えても作曲者の意図を曲げている。テンポの制御もそうで、特になにも指示がなくてもルバートしていたりする。敢えて淡々と弾くべきところがそうなっていると、何かとても安っぽく聞こえて、ちょっとげんなりします。じゃあ何故そんなロジェを買ってしまったのかと言うと、デュトワとの共演盤のラヴェルの協奏曲が良かったからなのですが、思えばそれは「ともかく指はよく回る」ロジェが、テンポ制御には人一倍うるさいデュトワと組んだから良かったわけで、ソロになってしまえば「指はよく回るけど…?」に過ぎない、と言うことなんでしょうか。

ともかく、ドビュッシーの良い録音を探すという宿題があったのは思い出したので、何とかせねばです。何かお薦めはありませんか?

ボジョレーヌーヴォー!2005年11月27日 22時43分

近所のとても意欲的な酒屋さんが、とても意欲的なボジョレーのシャトーと契約して取り寄せているヌーヴォーがあるというので2本予約し、解禁後の土曜に引き取って来ました。さて誰と楽しもう? 実は決めてはいたのです。最近、お互い忙しすぎて一緒に遊べていない、夫婦で編集者のMさん一家をお招きして、久々に音楽しながらの宴会をと思っていたのでした。会って判明したのですが、これが多分半年振り。近所に住んでいる同士ってそんなに遊べないものですか? うーん。忙しいうちが華というのも一面の真理ですが、ちょっと度が過ぎないか。ともあれ、年末進行の合間を縫って予定をあけて下さった Mさん夫妻には感謝です。

生ピアノを導入したのが夏だったので、Mさんへのご披露はこれが初。ジャズの素養のあるMさんの手に掛かると、普段わが家で鳴り響いているクラシック学徒の響きとはまた別の世界が立ち現われて格別です。最初はベースで合わせてたのですが、Stevie Wonderの"Send One Your Love"が繰り出されたのですかさず鍵盤ハーモニカに持ち替えてみたら、これがよく合って。いやぁ、デュオの楽しみって多彩ですね。ベースとピアノ、ピアノと鍵盤ハーモニカ、そして今回はお休みしましたがギターとベース、ギターとピアノというのもあり。音楽を鳴らす楽しみを久々に満喫しました。

音楽の楽しみといえば、忘れちゃいけないのがアカペラ。そう、長いことお休みしてますが、やっぱりこの4人が揃えばアカペラの修行をせねばならないのです。というわけで、まず小手調べにクリスマスナンバーの"Caroling, Caroling"、続いて「永遠の課題曲」"A Nightingale Sang in Berkeley Square"。その他4ビート系の課題も色々試してみましたが、まあ「今はちょっと厳しいが、やってれば何とかなりそう」なポジティヴな感触を得られたのは収穫でした。……あれ? このエントリのタイトルってボジョレーヌーヴォーですよ? photo話がずれてしまったので、とりあえずラベル写真をどうぞ。Mさん夫妻がフェラガモの経営するワイナリー"Il Borro"のとても美味しいワインを下さってそれを開けたので、幸い1本まだ残っていました。にしても、これは美味しかった。ヌーヴォーって作り方が違うので「ワインではなくて、ぶどうのお酒」という味が普通なんですが、これはしっかりワインでした。素晴らしい。